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やり方次第では法律違反の可能性も!?給料前借りのリスクと注意点

どうしても急ぎでまとまったお金が必要…そんな時、給料の前借りができないかと考えたことがある人もいるのではないでしょうか?

キャッシングなどで借金をするのに比べたら、もともと自分のお金になるはずの給料を少し早くもらう方が、よほど良い方法のように思えますよね。

ただ、給料の前借りというのは、やり方次第では法律違反になってしまう可能性があります。また、それでなくても会社とトラブルに発展するきっかけとなってしまうなど、様々なリスクが潜んでいます。

そこで、給料の前借りで思わぬトラブルに陥ることを避けるために、知っておいてほしい法律のことや注意点について、ここでは解説していきたいと思います。

働いた分の給料だけしか前借りできない!?知っておきたい法律のこと

基本的には、普段の生活費や物品の購入のためなど、緊急性と必然性のない理由での給料の前借りの請求に対しては、会社側には応じる義務はありません。

給料を所定の給料日より前に従業員に支払うかどうかは、会社の裁量に任せられることになります。

ただし、給料の前借りを希望する理由次第では、例外的に会社に支払いが義務付けられるケースもあります。そこに関係してくるのが、労働基準法です。

労働基準法の25条では、出産や疾病、災害などの非常時に必要な費用に充てるために給与の前払いを請求された場合は、所定の給料日前であっても既往の労働分に対する賃金を支払わなければならないと定められています。

ここで注意してほしいのが、『既往の労働』という文言です。『既往の労働に対する賃金』というのは、要するに『すでに働いた分の給料』ということになります。

つまり法律的には、給料の前借りとして正当に認められているのは、すでに労働の対価として発生しているお金で、なおかつまだ受け取っていない分のみなのです。

例えば、給与形態が月末締め翌月15日支払いの場合、実際に働いた分の賃金を受け取るまでには最大で1か月以上のタイムラグがありますよね。

労働基準法25条にのっとって給料の前払いを請求すれば、そのタイムラグを無くし、その時点までの労働で発生した未払い分の賃金を給料日を待たずに受け取ることができるということです。

逆に言えば、法律的に認められる非常時であっても、まだ働いていない未来の給料を前払いで支払わせることは原則としてできないのです。

緊急時以外に何らかの理由で給料の前借りを希望して、会社が対応してくれるという場合でも、厳密に言えば、この『既往の労働分』以上の金額を求めるべきではないと考えておいた方が良いでしょう。

知らなきゃ損する!給料日より早く支払いが受けられる2つのケース

上記の非常事態に該当しなくても、例外的に給料を所定の給料日より早く支払ってもらえるケースが2つあります。

  • 従業員本人が退職した場合
  • 従業員本人が死亡した場合
いずれかの理由で従業員が会社から除籍することになった場合は、その事象が起こってから7日以内に給与や社内積立金などの会社が保持している本人の資産をすべて支払う必要があります。これは所定の給料日とは関係なく実行しなければなりません。

退職したのに残りの給料が翌月のいつもの給料日に支払われるということはよくあるものですが、それは本来であれば間違ったことなのです。退職・転職時の知識の1つとして、覚えておいた方がよいでしょう。

『来月の給料、前借りさせて!』これって実は違法な借金かも!?

ここまでは法律的な給料の前借りの定義にのっとって解説してきましたが、一般的には給料の前借りと言えば、翌月以降分の給料のことを指しますよね。

実はこの、まだ働いていない翌月以降の給料を前借りするというのは、労働基準法17条において禁じられている『賃金と前貸金の相殺』に該当する可能性があります。

前貸金というのは、働いて返済することを条件にして給与から貸し付けるお金のことを指します。働くということを条件としてお金を貸すことは、強制労働につながってしまうリスクがあるとみなされます。そのため、労働基準法においては避けるべき行為とされているのです。

翌月分の給料を前借するということは、翌月の給料日には所定の給料が受け取れないということになりますよね。これはつまり、前借りしたお金を働いた対価である翌月の給料と相殺したということになるので、労働基準法17条に該当する形になってしまうのです。

要するに、翌月以降分の給料の前借りは、一歩間違えると違法な借金として扱われる可能性があると言えます。

ただ、この労働基準法17条において、一番の問題となるのは『働いて返済することを条件にする』という部分です。逆に言えば、その条件さえ外れていれば、法律的には給料の前借りは問題がないという考え方もあります。

例えば、『給料の前借り』という形をとらず、会社から従業員に対して、互いの信頼関係に基づいてお金を貸すという名目にすれば、少なくとも『賃金と前貸金の相殺』の範ちゅうからは外れる可能性が高いでしょう。

給料前借りトラブルを防ぐために…絶対作っておきたい借用書

法律的な問題をクリアしても、給料の前借りには少なからずリスクを伴います。やはりお金の貸し借りというのはどうしてもトラブルのもとになりがちです。

特に雇用関係がある中での金銭の貸し借りは、些細なきっかけから重大なトラブルに発展してしまいかねません。

そこでトラブルが発生するのを避けるために、給料の前借りをする際には、必ず金銭消費貸借契約という形式での借用書を作成することをおすすめします。

金銭消費貸借契約というのは、要するに『借りたお金は使いますが、同じ金額を必ず返しますよ』という借金返済の約束のことです。キャッシングカードローンでお金を借りる場合の契約も、これに該当します。

なお、一般的には金銭消費貸借契約には利息がつきものですが、給料の前借りの場合でも利息を定めることが望ましいでしょう。利息なしで金銭消費貸借契約を結んでしまうと、利息相当の金額が従業員の利益になるとみなされ、会社から従業員への贈与として取り扱われるリスクがあります。

そうなるとまた税金などの問題がでてきてトラブルの原因となるため、初めからきちんと利息を設定しておいた方がよいのです。

思わぬトラブルのもとに!?安易な給料前借りはNG

それでは最後に、給料の前借りに関して知っておくべきポイントをまとめておきましょう。

  • 給料の前借りは原則会社の任意だが、緊急非常時には既往の労働分の前払いが義務付けられている
  • 退職・死亡時には、会社は除籍から7日以内に給料を含む従業員の資産を支払う義務がある
  • 翌月以降分の給料の前借りは『賃金と前貸金の相殺』に該当し、違法になるリスクがある
  • 翌月以降分の給料の前借りをする場合、金銭消費貸借契約の借用書を作成するべき

給料の前借りというのは、会社によってはわりと頻繁に、簡単に行われている行為かもしれません。

しかし実際には、給料の前借りは複数の法律とかかわりがあり、場合によっては違法になりかねないリスクがあることなのです。

会社側と従業員、お互い納得の上で前借りをしているつもりでも、ちょっとしたことがきっかけで思いがけない大きな金銭トラブルに発展してしまうこともあります。

いざという時に困ることがないように、必要な知識を身に着け、リスクを確実に避けられるようにしておきましょう。

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