金欠対策!稼ぐ、借りる、貰う、凌ぐ…パターン別解決法

積立保険の解約で金欠解消!?「解約返戻金」について学ぼう

「お金がないから保険を解約した」という話、よく…とまではいいませんが、これまで聞いたことがある、という方は多いのではないでしょうか。

積立保険を解約すると戻ってくる「解約返戻金」で金欠を解消、という方法はありますが、リスクも伴います。

とはいえ、きっちりと保険の勉強をしている方なら別ですが、「とりあえず保障のために保険に入っておこう」という方の場合、「どうして保険を解約したらお金が戻ってくるんだろう」「お金が戻ってくるとしても、いくらくらいなんだろう?」とわからないことが多いですよね。

そこで、保険を解約するとどのくらいお金が戻ってくるのか、そのリスクや代替案など、今回は「保険の解約とお金」について解説していきたいと思います。

保険を解約したらお金が戻る?「解約返戻金」とは?

そもそも、どうして保険を解約したらお金が戻るのでしょうか?

すべての保険について、解約したらお金が戻るというわけではありませんが(これは次のトピックにて詳しく説明したいと思います)、いわゆる「貯蓄型」「積立型」の保険については、解約した場合一定のお金が戻るようになっているんです。

保険を解約することによって戻ってくるお金を「解約返戻金(かいやくへんれいきん)」と言います。

この、解約返戻金についての基礎知識をまずは解説していきたいと思います。

解約する時期によって解約返戻金の額は変わる

定期預金を利用している方ならイメージしやすいと思いますが、解約返戻金の額は解約する時期によって変わります。

例えばオリックス生命の「終身保険RISE」という商品の解約払戻金の額を表にして見てみましょう。

30歳男性が、保険料払込期間を「60歳まで」と指定し、500万円の保険金と設定したケースです。毎月の保険料は「10,920円」となります。
経過年数 年齢 払込保険料累計 解約払戻金 払戻率
5年 35歳 655,200円 444,500円 67.8%
10年 40歳 1,310,400円 952,150円 72.6%
20年 50歳 2,620,800円 1,963,800円 74.9%
30年 60歳 3,931,200円 3,047,800円 77.5%
30年 60歳
(解約払戻期間完了後)
3,931,200円 4,355,900円 110.8%
40年 70歳 3,931,200円 4,571,800円 116.2%
50年 80歳 3,931,200円 4,755,700円 120.9%

保険料すべてを払い終えるまでは、契約してから解約までの期間が短いほど、「払戻率」という数字が低いことがおわかりいただけるかと思います。

解約返戻金の計算方法は

払込保険料累計 * 払戻率 = 解約返戻金

となっているため、払戻率が低ければ低いほど支払った保険料を取り戻すことが出来ないんです。

しかし、払込が完了すれば、今度は払戻率が100%を超えていることがわかります。逆に解約返戻金が増えるというわけですね。

商品によっては支払った保険料が全額戻ってこないこともある

解約返戻金として、100%を超える払戻率であっても、解約されるのは保険の「貯蓄部分」のみのため、支払った保険料全額が戻ってこないケースもよくあります。

どのくらいまで戻ってくるのかは同じ会社であっても商品によって違いますので、加入する前にどのような計算なのか、あるいは返戻率なのかをしっかりとチェックしておく必要があると言えるでしょう。

解約してから1週間ほどで口座に振り込まれる

解約返戻金のために解約したいけど、どれくらいの期間で振り込まれるの?という疑問をお持ちの方もいると思います。

これも会社による部分が大きいのですが、

  • 解約の手続きのための連絡を担当者等に入れる
  • 解約のための必要な書類を保険会社に提出
  • 書類を受理し、手続きが行われてから3~4営業日程度で振り込まれる

という3つのフローを経る必要がありますので、1日2日ですぐ解約返戻金を受け取ることが出来る、とは思わない方がいいですね。1週間~10日ほどを見ておくといいでしょう。

自分の保険は「解約返戻金」の対象?自分の保険を見直そう

先程のトピックでも少し触れましたが、すべての保険において「解約返戻金」がもらえるわけではありません。

よって、加入している保険の種類によっては解約返戻金が全く貰えない!なんてこともあるわけです。

現在、主な保険は

  • 従来型
  • 低解約返戻金型
  • 無解約返戻金型

の3種類のいずれかの属性を持っています。それぞれどのような保険が該当するのかをこのトピックでは見ていきたいと思います。

返戻率によって解約返戻金の額が変わる「従来型」

まずは「従来型」保険から説明していきましょう。

従来型は保険の中でも一番古いタイプで、

保険名称 特徴・説明
終身保険 保険をかけた人が死亡するまで一生涯保障が続く。
高度障害になった場合でも保険金が支払われることが多い
養老保険 終身保険と違い、「満期」がある。
死亡するか、あるいは満期を迎えることで保険金が受け取れる
学資保険 子供の学費などのために積み立てておく保険。
商品によっては一時金が受け取れることもある
個人年金保険 自分で積み立てる年金タイプの保険。
自分が指定した年齢から、年金形式で毎月一定額を受け取れる

の4つの保険で多く使われています。

いずれも一定期間以上保険料を支払うことで、死亡時や契約時に指定したタイミングで保険金を受け取れるような仕組みのものが多いですね。

従来型の場合は、解約返戻金は「返戻率」に依存します。保険商品や、つけている特約、保険料の払込期間などで返戻率が変わりますのでしっかりと事前に確認しておくことが必要と言えるでしょう。

例えば「アフラック」の学資保険「アフラックの夢みるこどもの学資保険」を、

30歳男性:子供1歳~:学士年金支払開始年齢18歳:受取総額900万円

という条件にした時、

保険料払込期間 18歳完了 10歳完了
月払保険料 45,840円 84,930円
受取総額 9,000,000円 9,000,000円
累計払込保険料 9,351,360円 9,172,440円
返戻率 96.2% 98.1%

と、返戻率がちょっと変わっていることがおわかりいただけるかと思います。

払込が完了するまで返戻率が低い「低解約返戻金型」

従来型は返戻率が商品によって違ったり、返戻率の数字の変動が大きくないのですが、この「低解約返戻金型」は少し違います。

具体的にどう違うのか…といいますと、保険料の払込期間が終わるまでは、返戻率が70%程度しかありません。

しかし、払込期間が終われば、返戻率が100%を超える…というタイプの保険です。

これは従来型よりも新しく出てきたタイプの保険ですが、最近の終身保険の主流ともなっています。学資保険でもこのタイプは増えてきいますが、養老保険や個人年金保険ではあまり見られません。

低解約期間の間は返戻率が低いものの、その分保険料が安いというメリットもあります。従来型とどちらがいいかは好みや保険料次第といったところでしょう。

前のトピックで例として出させていただきました「オリックス生命」の保険は「低解約返戻金型」です。

見直していただければ、払込期間が完了するまでは67~77%程度だった返戻率が、低解約期間が終了した途端、110%という高い返戻率になっていることが確認できるかと思います。

解約返戻金そのものがない「無解約返戻金型」

最後は「無解約返戻金型」の説明をさせていただきます。

これはもう漢字の見た目からおわかりいただける通り、解約返戻金がない(あるいは非常に少ない)タイプの保険です。

いわゆる「掛け捨て」と言われる保険で、以下のような保険に多いです。

保険名称 特徴・説明
定期保険 保障期間が一定(1年~5年程度)のみだが、保険料に対して厚めの保障を受けられる。
見直ししやすく、保険料が安いのが特徴
収入保障保険 死亡保険金を、被保険者が死亡した時ではなく、毎月・毎年など
一定期間年金のように支払われるタイプの保険。
だんだんと受け取れる保険金が減少していく。
医療保険 ケガや病気の治療のためにかかる医療費を保障するための保険。
主に手術費・入院費などが対象で、特約でがんなどを対象にする

上記の中で、定期保険は解約返戻金があるタイプもありますが、ほとんど期待しないほうがいいでしょう。

これらの保険しか加入していない、という場合は保険を解約しても解約返戻金を受け取れる可能性は非常に低いです。

自分の保険のタイプと返戻率は、解約前にチェックすべき!

保険には3つの種類があることはおわかりいただけたかと思います。

解約しようか悩みやすいものは「終身保険」か「学資保険」かと思いますが、この2つは従来型か、低解約返戻金型かで受け取れる解約返戻金が大きく変わってきます。

契約書類などに今一度目を通し、どのくらいのお金が戻ってくるのか解約の連絡を入れる前に一度計算してみることをおすすめします。

解約する前に!知っておきたい、保険を途中解約する際の注意点

解約返戻金の内容や、解約返戻金がもらえる保険の種類などを解説してきました。

ご自身の保険の契約内容を見直した上で「やっぱり解約しよう!」と決意した方もいると思いますが、ちょっとまってください。

当然ながら、保険を解約すると様々なデメリットが生まれます。勢いで解約する前に、どのようなデメリット・注意すべきポイントがあるのかを知っておきましょう。

保険を解約すると、保障が受けられなくなる

当たり前ですが、保険を解約すると死亡保障などは一切受けることができなくなります。

そのため、解約後に事故などで死亡してしまっても保険金を受取ることは出来ません。

保険料が安い他の保険(掛け捨てなど)に加入する、自分に必要な特約だけをつけて保険料を抑えるなど工夫の上、なんらかの保障は確保しておくべきでしょう。

保険料払込の完了が近い時の解約は損

現在主流の「低解約返戻金型」の場合、保険料の払込期間中か、払込完了後かで受け取ることが出来る解約返戻金は大きく違ってきます。

先程表にしていましたオリックス生命の「終身保険RISE」の該当部分のみを改めて抜き出してみました。

払込保険料累計 解約返戻金額 返戻率
低解約返戻期間 3,931,200円 3,047,800円 77.5%
低解約返戻期間完了後 3,931,200円 4,355,900円 110.8%

これはどちらも同じ年齢、同じ払込保険料の累計額なのですが、低解約返戻期間内かそうでないか(完了後)で大きく返戻率が違うことがわかります。

どうしてもすぐにお金が必要で…というような緊急性がない限り、保険料の払込期間中、特にもうすぐ払込が完了するようなタイミングであればすぐ解約はせず、返戻率が高くなったタイミングで解約することをおすすめします。

他に貯蓄の手段がない場合、緊急時の貯蓄が0になる

終身保険や養老保険、学資保険は死亡などの保障する保険商品ではありますが、解約返戻金や満期金を受け取ることが出来ることから、「貯蓄の手段」であるとも言えます。

実際、貯蓄目的で低解約返戻期間型の終身保険に加入している人もいます。

他に定期預金などの貯蓄をしているのであれば解約という手段もアリだと思いますが、他に一切の貯蓄がない場合、保険を解約してしまうと緊急時の備えがなくなってしまいます。

商品によっては定期預金よりも利回りがいいこともありますので、「貯蓄として置いておくかどうか」という点も加味して本当に解約するべきか考える必要があると言えるでしょう。

受け取った解約返戻金に税金がかかることも

解約返戻金を受け取ったらそれで満足!…とはならないのが悲しいところで、受け取った解約返戻金に税金がかかるケースがあります。

かかる可能性がある税金のひとつは「所得税」です。これは、解約返戻金が「支払った保険料」を超える場合、その超えた部分が課税対象となります。

すぐ上の表を参考にしますと、低解約返戻期間完了後の場合返戻率が「110.8%」となっていますよね。その中の「10.8%」部分が所得税の課税対象となると思っていただければOKです。

さらに、課税対象となる部分から「50万円」は「特別控除額」として課税対象外となり、そこからさらに2分の1した金額が「一時所得」として所得税がかかることになります。

文章にするとややこしいのですが、計算式にするとシンプルで、以下のようになります。

(解約返戻金 – 払込保険料額 – 50万円) * 1/2

上記の式で算出された額が「一時所得」として、所得税の対象となります。

また、所得税がかかるのは保険を契約した人が解約返戻金を受け取った場合です。

夫の終身保険を解約し妻が解約返戻金を受け取った場合や、親の終身保険を解約し子供が解約返戻金を受け取った場合などは「贈与税」がかかります。

贈与税の場合は「1年間の間に贈与を受けた額のうちの110万円まで」は非課税になりますが、それ以上の額だと税金がかかってしまいますので注意しましょう。

対象の保険に加入しているなら、「契約者貸付」を使うのも手

「お金が必要だけど、保険を解約するのはちょっとな…」と思っている方も多いと思います。

実は、保険を解約するというリスクを負って解約返戻金を貰わなくても、一時的にお金の都合をつける手段があるんです。

それが「契約者貸付」という方法。該当する生命保険を利用している人であれば、超低金利でお金を借りることができちゃいます!

「契約者貸付」って何?

まず、契約者貸付について説明しましょう。

契約者貸付とは、解約返戻金の一定範囲内の金額で、契約者の申し出によってお金を借りることが出来る制度です。

いうなれば、自身の保険を担保にしてお金を借りるというわけですね。

契約者貸付の利用のために保険の解約をする必要はありませんので、「保障も継続して受けつづけながら、なおかつお金を借りることが出来る」という、ある意味夢のような制度とも言えますね。

対象となる保険は、契約者貸付が「解約返戻金」から貸し出しているという点から、解約返戻金がある保険ということになります。

具体的には終身保険や養老保険、学資保険、個人年金保険が該当します。

融資までの時間も早ければ即日、遅くても数日で借りられますので、緊急性が高い時の利用も有効でしょう。

金利はカードローン等よりもずっと低金利!

しかし、お金を「借りる」となると気になるのは金利でしょう。しかしその点も問題はない、と断言できます。

なぜなら、契約者貸付の金利は一般的なカードローンなどにくらべてかなり低いからなんです!

一部の保険会社ではありますが、契約者貸付にて適用される金利を調べてみました。中には特別な条件を満たすともっと低い金利で借りられるケースなどもありますが、一般的な(通常の)契約者貸付の利率を記載しています。

保険会社名 適用利率
かんぽ生命 2.25%
日本生命 3.00%~3.75%
アフラック 2.75%~4.00%
明治安田生命 2.15%~5.75%
住友生命 1.55%~5.75%
朝日生命 2.50%~5.75%
ソニー生命 2.50%~8.00%
オリックス生命 2.85%~7.75% ※終身保険の利率

一般的なカードローンの最高金利(一番高い金利)が15%~18%であることを考えると、かなりお得にお金を借りられることがわかります。

保険を解約したくないから、カードローンやフリーローンでお金を借りよう…と思っていたり、保険を解約して返戻金をもらおうと思っている方は、かなりの低金利で利用可能な契約者貸付も候補に入れてみてはいかがでしょうか。

借り入れ可能な金額は自分の保険内容によって変わる

解約返戻金の一部の額が貸付対象となりますから、どれくらい借りることが出来るのかは契約内容や、保険料をどれだけ支払っているかで変わります。

保険会社のホームページ(契約者専用ページ)や電話などで自分がどれだけ借りることが出来るのか調べることが出来ますので、興味がある方は一度問い合わせてみるといいでしょう。

当然ながら、保険料の振込期間が短いと利用できる額が少なかったり、利用できないというケースもあります。

返済を怠っていると保険が解約されたり、返戻金が少なくなる

契約者貸付はカードローンなどのように「毎月○円返済しなければならない」ということはありません。どうしても今はお金が足りない、という時は返済をせず、落ち着いたらある程度の額を返済する、という形でも問題ありません。

しかし、借りたお金+借りたお金にかかる利息の合計額が、解約返戻金を超えると保険そのものが失効してしまいます。

「このままでは失効するので返済してください」というお知らせがきますので、知らない間に失効しているということはほぼないと思いますが、「いつでも返済出来るから返済しなくてもいい」わけではありません。

さらに、契約者貸付の場合金利は「複利」です。

「複利」とは借りたお金と、そこにかかる利息分にも金利がかかる利息計算方法です。例えば100万円借りて利息が5万円ついた場合、次の利息計算タイミングでは「105万円」に利息がかかるというわけです。

なので、ある程度計画的に返済しないと利息が膨らんでしまうおそれがあるんです。

また、満期金を貰う養老保険のようなタイプの場合、お金を受け取るタイミングで契約者貸付を利用していると、借入額+利息額を差し引いた額しかもらえません。

当然の事ではありますが、なんとなく損した気分になってしまうので避けたいところですね。

積立保険の解約はリスクあり!どうしてもの手段にしよう

保険の見直しや生活環境が変わったなどの理由であれば解約も有効ですし、絶対にしてはいけないことではありません。

ただ、保険を解約し、解約返戻金で金欠を解消しようというのは有効な手段ではあるものの、大きなリスクも伴います。

特に貯蓄としても利用しやすい終身保険や養老保険は、解約することで将来お金がない…と困ることになる可能性もあります。

契約者貸付であれば保障を受けたまま低金利でお金を借りることが出来ますので、金欠のために保険を解約しようと考えていたのであれば、こちらの手段を取ってみてはいかがでしょうか。

お金のために保障を手放すのは最後の手段、と思っておきたいですね。

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