失業で金欠の時頼りになる失業保険!制度について徹底解説します
失業保険とは、何らかの都合で会社を辞めたり会社が倒産したなどの理由で仕事を失ったりした時に、お金を受け取ることができる仕組みのことを言います。ですが、正確に言えば現在の制度上では失業保険という言葉はなく、雇用保険制度のうちの求職者給付と呼ばれる給付金がそれに当たります。
雇用保険によって失業した時にお金を受け取れるので、失業時の金欠を不安に思うことなく次の職探しができますが、求職者給付は誰でも受け取れるものではなく、支給が受けられる要件を満たす必要があります。となると要件が気になりますし、また受け取れる金額や期間も気になるところです。
そこで今回は失業保険の制度について詳細をまとめてご紹介します!
休職者給付のうち全員が受け取れる給付金!基本手当の詳細を解説
雇用保険には、失業者に給付を行う失業等給付と、失業の予防などを目指す雇用保険二事業とがあるのですが、一般的に失業保険と呼ばれる求職者給付は失業等給付に分類されます。
ちなみに雇用保険は政府によって管掌されている、労働者の失業などに備えて必要な給付をすることを目的とした強制保険で、事業を行う際に労働者を雇用する場合強制的に加入することになります。
この制度によって、正社員である、パートタイムであるなどに関わらず、31日以上の期間引き続いて雇用されると見込まれ、所定労働時間が1週間につき20時間以上ある労働者は、雇用保険の被保険者となります。
求職者給付には、一般の求職者に対するものと高年齢の求職者などに対するものがありますので、まずは一般の求職者に対する求職者給付について詳細を確認しましょう。
一般の被保険者に対する給付の種類
一般の被保険者に対する求職者給付の種類は、以下の通りです。
- 基本手当
- 技能習得手当(受講手当・通所手当)
- 寄宿手当
- 傷病手当
それでは、それぞれの手当てについて詳細を確認しましょう。
基本手当を受給する要件
基本手当は、一般の被保険者に対する給付金のうち要件を満たしていれば全員が受け取れる手当てで、求職者給付の中でもまとまった金額が支給されます。基本手当を受給するには、以下の要件を満たしている必要があります。
- ハローワークで求職申し込みをしており就職の意思と能力がある
- 失業の状態にある(本人・ハローワークが努力しても職業に就けない)
- 離職日より前の2年間に通算12か月以上被保険者であった期間がある
失業状態であることを確認するために、4週間に1回ハローワークに来所して失業の認定を受けることになります。また、被保険者であった期間については、特定受給資格者か特定理由離職者と言われる人なら、離職日より前の1年間に通算6か月以上被保険者であった期間があれば基本手当の支給の対象となります。
ここでいう月の数え方は、離職日を元にして1か月ごとに区切った期間のうち、賃金の支払いの基礎になる日が11日以上あれば1か月となります。
特定受給資格者とは、以下のような理由で離職した人のことです。
- 事業所の倒産
- 事業所での大量の雇用変動
- 事業所の廃止や移転
- 自分の責任による解雇以外の解雇
- 契約時に明示された条件と実際の労働条件が著しく違ったこと
- 賃金が期日までに支払われない・85%未満に下がったなど賃金の問題
- 規定を超える時間外労働
- 事業所の法令違反
- 退職勧告や契約が更新されなかったこと
特定理由離職者とは、以下のような理由で離職した人のことです。
- 労働契約期間が終了した際に更新を希望したが合意に至らなかった
- 自己都合による退職(体力不足や障害、結婚や育児などの理由)
- 人員整理の希望退職に応じた
ここに挙げたものが全てではありませんが、主な例を挙げています。これらの理由で再就職の準備をすることができないまま離職した人や、労働契約が更新されなかった人などは、基本手当の支給日数が手厚くなる可能性があります。
ちなみに、船員の人が求職の申し込みをしたい時は、ハローワークではなく地方運輸局が申し込み先となり、雇用保険の手続きも地方運輸局で行います。
基本手当の支給額
基本手当の支給額は以下のような計算式に当てはめて計算されますので、全員一律ではなく、人によって受け取れる金額が違います。
この式で計算された1日当たりの受給額は、基本手当日額と呼ばれます。
60歳から64歳の人は45%~80%
この割合は、賃金が低い人の方が高くなるように設定されています。ただし、基本手当日額には上限がありますので、先ほどの計算式に当てはめて計算した結果、年齢別に設定された以下の上限金額を超える場合は、上限の金額が支給されます。
年齢 | 基本手当日額の上限 |
---|---|
30歳未満 | 6,710円 |
30歳以上~45歳未満 | 7,455円 |
45歳以上~60歳未満 | 8,205円 |
60歳以上~65歳未満 | 7,042円 |
基本手当の支給期間
基本手当の支給期間は、その人の年齢や被保険者であった期間、離職理由などによって違います。
まずは、特定受給資格者にされる人の場合の給付日数を確認しましょう。特定受給資格者の場合、年齢によって支給期間に差があります。
◎30歳未満の人
被保険者期間 | 給付日数 |
---|---|
1年以上~5年未満 | 90日 |
5年以上~10年未満 | 120日 |
10年以上~20年未満 | 180日 |
◎30歳以上35歳未満の人
被保険者期間 | 給付日数 |
---|---|
1年未満 | 90日 |
1年以上~5年未満 | 120日(または90日) |
5年以上~10年未満 | 180日 |
10年以上~20年未満 | 210日 |
20年以上 | 240日 |
同じ被保険者期間なのに給付日数に差がある場合があるのは、離職日によって規定が違うからです。
◎35歳以上45歳未満の人
被保険者期間 | 給付日数 |
---|---|
1年未満 | 90日 |
1年以上~5年未満 | 150日(または90日) |
5年以上~10年未満 | 180日 |
10年以上~20年未満 | 240日 |
20年以上 | 270日 |
同じ被保険者期間なのに給付日数に差がある場合があるのは、離職日によって規定が違うからです。
◎45歳以上60歳未満の人
被保険者期間 | 給付日数 |
---|---|
1年未満 | 90日 |
1年以上~5年未満 | 180日 |
5年以上~10年未満 | 240日 |
10年以上~20年未満 | 270日 |
20年以上 | 330日 |
◎60歳以上65歳未満の人
被保険者期間 | 給付日数 |
---|---|
1年未満 | 90日 |
1年以上~5年未満 | 150日 |
5年以上~10年未満 | 180日 |
10年以上~20年未満 | 210日 |
20年以上 | 240日 |
次に、一般の離職者の場合です。一般の離職者の場合、年齢による支給期間の差はありません。
被保険者期間 | 給付日数 |
---|---|
1年以上~10年未満 | 90日 |
10年以上~20年未満 | 120日 |
20年以上 | 150日 |
こうして比較してみると、特定受給資格者の方が給付日数が手厚くなっている場合が多いことが分かりますね。
基本手当の待機期間について
基本手当を受け取るまでには、待機期間と呼ばれる期間があります。
ハローワークに離職票を提出し、合わせて求職の申し込みをした日から7日間は待機期間となり、この期間はどのような理由で離職したとしても基本手当は支給されません。
その後、通常であれば基本手当の支給が開始されるのですが、離職の理由などによっては給付制限と呼ばれる期間があり、さらに基本手当の受給開始が遅くなることもあります。給付制限については、以下のように決められています。
給付制限の種類 | 離職の理由 | 給付制限の期間 |
---|---|---|
離職の理由による制限 | 自己都合で退職した 重責解雇による退職など |
3か月 |
紹介を拒否したことなどによる制限 | 職業紹介を拒否した 職業訓練を拒否したなど |
拒否した日から1か月 |
基本手当は就職の意思がある人に支給されるものなので、ハローワークによる職業紹介を拒否したり、職業訓練を拒否したりすると給付が受けられなくなるということですね。
雇用保険を受け取るための手続き方法
雇用保険を受け取りたい場合、以下の流れで手続きをします。
そのためには、離職後に「雇用保険被保険者離職票(-1、2)」という書類が会社から送られますので、受け取っておきましょう。勤務先の会社によっては、直接受け取りに行かなければいけない場合もあります。
2、ハローワークによって受給資格があるかどうか判断される
3、受給資格の決定と合わせて離職理由の判定も行う
4、雇用保険受給者初回説明会で雇用保険についての説明を受ける
その後、4週間に1回失業の認定を受けることになります。
必要書類は以下の通りですので、準備しておきましょう。
- 雇用保険被保険者離職票(-1、2)
- 個人番号通知書類(マイナンバーカード・通知カードなど)
- 身元確認書類(運転免許証・マイナンバーカード・健康保険証など)
- 写真
- 本人名義のキャッシュカードか預金通帳
- 印鑑
基本手当が受給できるのは離職から1年間ですので、手続きは早めにするようにしましょう。
条件を満たせば基本手当と合わせて受け取れる!その他の手当一覧
先ほどご紹介した基本手当以外にも、条件を満たせば受け取れる手当があります。これらの手当ては基本手当と合わせて受け取ることができますので、条件に合えばさらに金欠を緩和することができます。
では、どのような手当てがあるのか、確認していきましょう。
技能習得手当
技能習得手当とは、基本手当手の支給を受けている人が再就職のために公共職業訓練が受けられるように、公共職業安定所の所長か地方運輸局長の指示を受けて公共の職業訓練等を受講した場合に受け取れるものです。
技能習得手当には、以下の2種類があります。
手当の種類 | 内容 | 金額 |
---|---|---|
受講手当 | 公共職業訓練を受けた日に支給 | 日額500円 上限20,000円 |
通所手当 | 訓練実施施設への交通費 | 最高で月42,500円 |
公共職業訓練の受講が決まったら、公共職業訓練等受講届と公共職業訓練等通所届を管轄の公共職業安定所長に提出しましょう。その際に、受給資格証も合わせて提出します。
寄宿手当
寄宿手当は、公共職業訓練などを受けるために家族と別居し寄宿する必要がある場合支給されるお金です。月額10,700円ですが、寄宿していない日や支給の対象にならない日がある場合、減額されることもあります。
手当を受け取る際は、公共職業訓練等受講届と公共職業訓練等通所届を管轄の公共職業安定所長に提出しましょう。その際に、受給資格証も合わせて提出します。
傷病手当
傷病手当は、ハローワークに求職申し込み後、病気や怪我などによって引き続いて15日以上職業に就けない時に受け取れる手当で、基本手当が受け取れない間の生活を安定させることを目的としたものです。職業に就けない期間が14日以内の場合は、通常通り基本手当が支給されるので心配はありません。
職業につけない期間が30日以上になるのであれば、最大で4年間まで基本手当を受け取る期間を延長することも可能です。
傷病手当は、職業に就けない理由がやんでから最初の認定日までに、公共職業安定所で認定を受ける方法で受給の手続きをします。申請を代理人が行ったり郵送で提出したりする方法も認められています
高年齢者や短期・日雇い労働者でも受け取れる求職者給付をチェック!
それでは次に、一般の被保険者以外の人に対する3種類の求職者給付の種類を見ていきましょう。
高年齢の被保険者に対しての求職者給付
高年齢の被保険者に対する給付金は、高年齢求職者給付金と言います。高年齢者というのは、65歳以上の被保険者で、短期雇用特例被保険者・日雇労働被保険者に当たらない人を言います。高年齢求職者給付金を受け取るには、以下の要件を満たしている必要があります。
- 離職したことによって資格認定を受けた
- 労働の意思と能力があっても就職できない状態である
- 離職前1年間のうち被保険者であった期間が通算6か月以上ある
支給は失業認定を行った日に決定され、被保険者だった期間によって基本手当が以下の日数分支給されます。
被保険者だった期間が1年以上 | 被保険者だった期間が1年未満 |
---|---|
50日分 | 30日分 |
短期雇用特例被保険者に対しての求職者給付
短期雇用特例被保険者に対する給付金は、特例一時金と言います。短期雇用特例被保険者というのは、季節的に雇用されている人などのことなのですが、こういった形態で働いている場合、期間ごとに就職したり退職したりを繰り返すことになります。
そうなると、一般の労働者のように連続して働いているわけではなく、基本手当を受け取れる要件に合わない場合が出てきますので、生活実態に合わせて一時金という形で求職者給付を支給する形を取っています。
特例一時金を受け取るには、以下の要件を満たしている必要があります。
- 離職したことによって資格認定を受けた
- 労働の意思と能力があっても就職できない状態である
- 離職前1年間のうち被保険者であった期間が通算6か月以上ある
失業認定を行った日に、特例一時金が支給されます。支給額は、一般の被保険者と同じ計算式で計算した金額の30日分となります。
日雇労働者に対しての求職者給付
日雇労働被保険者に対する給付金は、日雇労働求職者給付金と言います。日雇労働者というのは、日々雇い入れられたり30日以内の短期間の定めで雇い入れられたりする人のことで、雇用形態に合わせて求職者給付が支給されます。
日雇労働求職者給付金を受け取るには、以下の要件を満たしている必要があります。
- 適用区域内に住み、適用事業に雇用される
- 適用区域外に住み、適用区域内で適用事業に雇用される
- 適用区域外に住み、適用区域外で厚生労働大臣指定の適用事業に雇用される
日雇労働求職者給付金の支給を受けたい場合は、ハローワークに資格取得届けを提出し、日雇労働被保険者であると確認してもらう必要があります。認定されれば、日雇労働被保険者手帳が交付されます。
失業日が属する月の前の2か月間で26日以上印紙保険料が納められていれば、その日数に合わせて給付金の金額が決められます。
求職者給付以外にもある!受け取れる可能性がある失業給付まとめ
先ほど、失業保険に当たる求職者給付は、制度上失業等給付に分類されることをお話ししましたが、求職者給付以外にも受け取れる可能性がある求職者給付があります。
そこで、どのようなものがあるのか、まとめてご紹介します。
就職促進給付
就職促進給付は、就職の促進を目的として支給される給付で、以下の種類があります。
- 就業促進手当
- 移転費
- 求職活動支援費
就業促進手当は、さらに以下の4種類に分かれていますので、手当の名称と手当てが受け取れる場合についてご紹介しています。
ただし、ここでご紹介した以外にも詳細な要件がある場合がありますので、受給を検討される方は事前にハローワークに問い合わせる、ハローワークのホームページをチェックするなどして確認してみてください。
- 再就職手当…基本手当支給日数が3分の1以上ある状態で安定した職に就いた時
- 就業促進定着手当…前の職場より賃金が低い再就職先で6か月以上雇用された時
- 就業手当…再就職手当がもらえない常用雇用以外の形態で再就職した時
- 常用就職支度手当…障害などがあり就職困難な人が安定した職に就いた時
いずれの場合も、基本手当を受給する資格を持っていることが前提です。また、就業促進定着手当を受け取るには、再就職手当を受け取っていることが必要です。
移転費は、ハローワークの紹介によって再就職したり公共職業訓練を受けたりする際に、居住地を変更する必要が出てきた時に支給される手当です。
求職活動支援費も、さらに以下の3種類に分かれます。
- 広域求職活動費…広い地域で求職活動を行う場合に必要な交通費や宿泊費
- 短期訓練受講費…職業訓練を終了した際に本人が支払った金額の2割を支給
- 求職活動関係役務利用費…子どもを持つ人が利用した保育サービスなどの費用
求職活動関係約務利用費は、費用の全額ではなく一部が負担されます。
教育訓練給付
教育訓練給付は、働く人の能力を開発し、キャリア形成の支援を行うすること目的として支給される給付で、以下の種類があります。
- 一般教育訓練給付金
- 専門実践教育訓練給付金
一般教育訓練給付金は、一般の被保険者または高年齢被保険者が受け取れる給付金で、厚生労働大臣が指定する教育訓練を終了した際に必要経費の20%が支給されるものです。支給を受けるには、被保険者であった期間が3年以上あることなどが必要です。ただし、初めて給付を受ける際などにはこの通りではないこともあります。
専門実践教育訓練給付金は一般の被保険者または高年齢被保険者が受け取れる給付金で、厚生労働大臣が指定する教育訓練を終了した際に必要経費の40%が支給されるものです。支給を受けるには、被保険者であった期間が10年以上あることなどが必要です。ただし、初めて給付を受ける際などにはこの通りではないこともあります。
もう一つ、教育訓練支援給付金という給付金があるのですが、これは時限措置で、平成31年3月31日までの制度となりますのでここでは省いています。
雇用継続給付
雇用継続給付は職業生活が円滑に継続できるようにすることを目的として給付されるお金で、以下の3種類があります。
- 高年齢雇用継続給付
- 育児休業給付
- 介護休業給付
高年齢雇用継続給付は、60歳から65歳未満の人に支給されるもので、60歳を超えた後の賃金が60歳の時の賃金の75%未満になった時に支給される給付金です。
失業で金欠!そんな時にはハローワークで失業保険の手続きをしよう
失業すると収入が無くなり金欠になってしまうことは予想できることでもあるので、雇用保険の制度によって生活の心配をすることなく新しい職探しをすることができるように制度が整えられています。
そのため、失業で金欠になったら、まずはハローワークで求職の登録をして、失業保険と呼ばれることの多い求職者給付が受けられるように手続きをするといいですね。
再就職すれば金欠からは抜け出せますから、そのためにも生活の心配をしなくていい状態を整え、それから落ち着いて職探しをしたいものです。
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